最初は毛皮

レディスロング

 会社を設立して最初に扱ったのはミンクやフォックスの毛皮でした。
 同業者から独立するのが十年遅かったな、と言われました。
十年前に毛皮の貿易をやっていたらビルが建ったと言われてましたが、私が会社を始めた時には毛皮の値段がどんどん下がってきていた時でした。
 それでも今に比べればまだ毛皮は高級品で、30万〜50万の毛皮がよく売れました。芸能人も何人かやってきました。
 毛皮は数年しか扱いませんでした。

 ミンクで最高級と言われていたのはブラックグラマーです。
これはアメリカ産のブラックミンクで、差し毛と綿毛の長さがほぼ同じで、ビロードのような手触りで本当にきれいでした。
 次はスカンジナビア産のサガミンク。アメリカ産のミンクの全てがブラックグラマーなのではなく、スカンジナビア産のミンクが全てサガではありません。 その中の選ばれた物だけです。
 それぞれに規格があり、合格したものコート一着分にだけラベルが一枚与えられました。 この色のミンクにはこの色のラベルということが決まっていましたが、偽物のラベルを貼って堂々と高値で販売されている商品も何度か見かけました。
 ブラックミンクでも同じ黒でも微妙に色が違いますので、全く同じ色の毛皮をコート一着分揃えるのはなかなか大変です。
 雄ミンクは大きくて毛足が長くて豪華で重い代わりに数が少なくてすみますが、雌は柔らかくて軽く、数が多く必要になります。 デザインにもよりますが主に革の縁取りなどにされるのは雄でした。
 毛皮は数センチの長さにバイアスに切り、それを繋ぎ合わせてコートを作りますが、毛皮の枚数を少なくしてコストを安くするために間に革をはさんだりしたものもありました。
 また、毛皮は引っ張って伸ばせば3倍以上に伸びますので、伸ばして大きくした粗悪品もありました。伸ばしたものは毛が密集していないので暖かみに欠けますし雨にも弱いですが、素人の人は軽くて良いコートだと勘違いされたりしているようでした。
 同じ色の黒を揃えられない時などには少しだけ色の違う黒を使う時もありますが、その場合は脇の下や袖の裏など目立たない場所に使います。
 手触りを良くするために差し毛を抜いたりしている製品もありますが、差し毛は綿毛を守っているものなので抜いたりすると傷みが早いのではないかなと心配になります。
 毛皮を輸入するには20%の税金がかかります。

                  
by (株)ビーウェルインターナショナル 山口 信行