ぬ!
家の前を変わった女性が通ります。
色んな洋服を重ね着して、いくつかの大きなバッグを持ち、二つか三つのゴミ袋には衣類がたくさん入っているのが透けて見える。
「ホームレスじゃないの」と近所の人が言っていたけど、精神的な病気の人かな、という気もする。
昨日の夕方、ルイたんを連れて歩いていて、ふと気がつくとその人が6M道路の反対側にいた。
よく聞こえないけれど、サングラスをかけて、こちらの方向を見ながら一人で何かブツブツ話しているので出来るだけその人を見ないようにしてました。
早く通り過ぎようとするのにルイは臭い嗅ぎに忙しくて止まったまま。 何故かその人も道の反対側で止まったまま。
こちらを向いたように見えるまま、段々と声が大きくなる。
「ぬ!」と言うのが聞こえた。
その後「堂々と」というのが聞き取れた。
サングラス越しだけれど敵意のようなものが感じられて私は盛んにルイにリードでツンツンと合図を送って歩き出すことを促したり、出来るだけ相手を刺激しないように小さな声で「ルイたん、行こうっ、早く行こうっ」と言うのだけれど、例のごとくルイは足を突っ張る。
すると急にその人は荷物全部を道路に下ろし、バッグから携帯電話を取り出してどこかにかけ始めた。
携帯電話?
驚きながらもホームレスかもと思っていた人が携帯で話しているので興味津々、そちらを見ないようにしながら聞き耳を立てていると「もしもし、困っているんです。」と聞こえてきた。
あら、普通に話せるのね。
でも、その後は意味不明の言葉が続く。
丁寧な話し振りながら何を言っているのかよく分からない。
その内、何度も繰り返される言葉に気がついた。
「ぬ!」「堂々と!」
はっ!!
犬だっ
ルイが堂々と歩いているので何とかして欲しいと、多分、警察に電話している・・・
慌ててポケットから干し芋を取り出してルイを誘導しながらその場を離れました。
道路の端と端に離れているのに、犬が恐かったんだわ。
悪いことしちゃった。